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「クリミア返さぬ」 幅19キロ海峡に巨大橋建設
2018年03月14日

ウクライナ南部クリミア半島をロシア本土と直接結ぶ「クリミア橋」の建設現場=クリミア東部ケルチで2月

 春まだ遠い海の沖合に向け、巨大な橋「クリミア橋」を架ける事業が急ピッチで進んでいた。ウクライナ南部クリミア半島の東端ケルチ。幅19キロの海峡の先にロシア本土がある。半島とロシアを洋上橋で結ぶ事業には、「クリミアをウクライナには絶対に返さない」とのプーチン露政権の意思が表れている。

 2014年2月にウクライナで政変が起こると、ロシアは同3月18日にクリミアを自国領に一方的に編入した。「クリミア橋」建設は16年にスタート。クリミア半島は北部でウクライナ本土と陸続きだが、ロシアとはケルチ海峡で隔てられている。しかし、今年末までに高速道路の橋を架け、来年末までにはさらに鉄道も通す計画だ。半島突端のケルチから半島中部の行政中心地シンフェロポリ、さらに半島西部のロシア黒海艦隊の本拠地セバストポリを結ぶ道路建設も同時並行で進められている。

 ケルチは他のクリミアの都市と同様、道路は穴ぼこだらけで疲弊した街にみえる。だが、地元の商店経営の50歳代の男性は言う。「橋が完成すれば、ロシアからの物流が盛んになり、クリミアは繁栄する」。露大統領選が実施される3月18日は「クリミア編入記念日」。ウクライナ政府はクリミアでの選挙実施を違法として認めない姿勢だが、人口の多数派はロシア系が占め、多くの住民はプーチン氏再選を期待していた。

 クリミア編入は、ウクライナだけでなく欧米諸国や日本などが「主権侵害」として認めず、対露制裁の直接要因となった。クリミア橋は、冷戦時代に東西世界を分けた「ベルリンの壁」のような「分断」の象徴にならないか。地元の架橋事業関係者が匿名を条件に語った。「その逆だ。今後、指導者たちは代わるだろうが、橋は残る。いつの日か、政治対立が収まり、『友好』の象徴になるはずだ」。橋は「ロシア化」の象徴となるのだろうか。

◇プーチン大統領「特別な存在」揺るがぬ人気

 「ありえないはずのことが現実となり、ソ連は崩壊した。そして、(ウクライナの独立で)クリミアが突然、別の国家の領土になったと知ったとき、ロシアの思いは、単に『ひったくられた』ではなく、『強奪された』だった」

 2014年3月18日、モスクワのクレムリン(露大統領府)。プーチン大統領は上下両院の議員や各界の代表者を集め、ウクライナ南部クリミアの自国領編入を宣言した。約50分にわたる演説で、プーチン氏が最も強い口調で語った言葉が「強奪」だ。プーチン氏からするとクリミアの奪還は「失地」の回復だ。1991年のソ連崩壊以降、大国・ソ連を崩壊させた欧米諸国に対し、ロシア国民がひしひしと感じてきた積年の恨みを晴らし、彼らに報復する−−そんな思いがうかがえる。

 プーチン氏とクリミアの代表者とが交わした編入合意文書の調印式に参加した「クリミア共和国」のトップで「共和国首長」のセルゲイ・アクショーノフ氏は今年2月、シンフェロポリで、毎日新聞の取材に応じた。アクショーノフ氏は、「プーチン氏はロシアとその利益を守るため、自分の一生をささげてきた人。クリミアに住む住民にとって特別な存在だ」と高く評価し、「欧米諸国はいずれクリミア(のロシア帰属)を認めることになる」と言う。プーチン氏の続投で、世界が変化するとの見方だ。

 同じく調印式に臨んだクリミアの議会議長、ウラジーミル・コンスタンチノフ氏は、今回の大統領選でクリミアでのプーチン陣営の選対本部長を務める。取材に「ロシアにとって聖なる土地であるクリミアで、史上初めて露大統領選が行われる」と、高揚した表情で選挙の意義を語った。

 クリミアが「ロシアの聖地」というイメージはプーチン氏が強めた。10世紀にロシアの源流であるキエフ大公国のウラジーミル大公が洗礼を受けた場所がクリミアで、ロシアを含むスラブ世界にキリスト教をもたらした。女帝エカテリーナ2世の時代の1783年にクリミアは帝政ロシアの支配に入った−−。14年のクリミア編入宣言演説で、そうした事例を挙げ「ロシア固有の領土」と強調した。プーチン氏は16年11月、モスクワに高さ18メートルのウラジーミル大公の像を建てた。

 「ウラジーミル大公の時代にそもそもモスクワは存在しなかった。プーチン氏は自分の政策に都合のいいように歴史の神話を作り上げている」(露ジャーナリスト、スワニゼ氏)との批判もある。また、クリミアに住むロシア系の中にもクリミア編入に反感を持つ人がいる。「私の祖国はウクライナ。生まれてからウクライナ人として生きてきた」と言うロシア系女性のオーリャさん(26)は仕事を続けるために露国籍を取得したが今もウクライナ旅券を隠し持つ。大統領選には投票しないつもりだ。だが、こうした住民はクリミアでは圧倒的な少数派。クリミアで、そしてロシアでプーチン氏の人気は揺らいでいない。【杉尾直哉】

◇ことば【クリミア編入】

 ウクライナにあるクリミア半島を2014年にロシアが一方的に編入した。ウクライナでは同年2月、親欧米派住民による抗議デモが激化して親露政権が崩壊。治安部隊とデモ隊の衝突で約100人が死亡するなど混乱が広がる中、ロシアがウクライナへの関与を深めた。クリミア半島はロシア語を話すロシア系の住民が65%、ウクライナ系が15%、クリミア・タタール民族が13%とされ、同年3月に親露派住民が住民投票を強行して「賛成多数」を理由に独立を宣言、その後にロシアが編入した。ウクライナ政府は住民投票自体が「憲法に違反している」と反発し、国際社会の多くもクリミアのロシア編入を認めていない。欧州連合(EU)や米国は一方的な編入に関与したとしてロシアの個人や企業に制裁を科している。

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