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「Heck」と言わせた八村の底力 NBAのルーキーが立ち向かう異例の挑戦!
2019年08月16日

<国際親善試合 日本・ニュージーランド>試合後、ファンとタッチを交わす八村(中央)と渡辺(撮影・会津 智海)

 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】「I had a heck of a time」で「とんもない目にあった」という意味だが、口語で「What the heck〜」となると、私は「マジかよ〜」と解釈することにしている。

 つまり「heck(ヘック)」にはその人にとって「ありえない」と思う予想外の部分をちらつかせる機能がある。けっこう便利な言葉なのだが、少なくとも私は学校で習った記憶がない。

 8月12日。クリニックで来日中だったNBAピストンズのドウェイン・ケイシー監督(62)が千葉ポートアリーナに姿を見せた。男子バスケットールの親善試合、日本対ニュージーランド戦を観戦していたのだが、その目の前で八村塁(21)が35得点をマーク。ピストンズは開幕6戦目となる11月4日、八村が所属するウィザーズとワシントンDCで対戦するのだが、同監督は敵チームのルーキーの力量を確かめたかったのだろう。そして八村の印象をこう語った。

 「彼はきっと“a heckuva player”になる」。「a heckuva(ヘクバ)」は「a heck of」の口語的な略。つまりピストンズの指揮官は八村の将来性に「とんでもなく凄い選手になる」と太鼓判を押したのである。

 

 実はこの試合、米AP通信が東京発の記事として配信している。「ウィザーズの1巡目指名選手、八村が日本のために35得点をマーク」というタイトル。男子バスケットボールの日本代表が国内で行った親善試合の内容をバスケ大国・米国の通信社が関心を示したこと自体、私にとって隔世の感を禁じ得ない出来事だった。この記事は米国のスポーツ専門局、ESPNの公式サイトでも紹介され、おそらく世界中のバスケ・ファンが読んだのではないかと思う。日本でプレーして世界を振り向かせた最初のプレーヤー…それが八村だった。

 NBAの今ドラフトで1巡目に指名された30人の中で、現在W杯の代表合宿に参加しているのは八村以外では全体2番目にニックスに指名されたカナダのR・J・バレット(19=デューク大出身)だけ。しかしバレットは7日に行われたナイジェリアとの親善試合には故障および未調整を理由に出場しなかった。

 だからこそW杯直前の親善試合初戦で先発し、いきなり35得点を稼いだウィザーズのルーキーの存在はとても目立つ。それが米メディアからも注目された理由でもあるが、即戦力として期待される1巡目指名選手が、NBAでデビューする前にこれだけ汗を流すのはレアケースだ。

 八村とともに日本代表の中心選手となるグリズリーズの渡辺雄太(24)は今月2日の練習で右足首を捻挫してしまったが、14日に行われたニュージーランドとの第2戦で復帰。11分ほどの徐行運転だったが、W杯本番に向けての準備を始めた。ナイジェリア戦で膝を打撲したカナダ代表のフォワード、ケリー・オリニク(28)は「全治1週間程度の軽傷」と診断されながら「無理はできない」としてW杯出場を見送る構え。「日本の現在と未来を背負っている」という自負と熱い思いがある2人は、他国の代表選手とは違った“立ち位置”にいるとも言える。

 W杯より五輪を優先させる感のある米国代表は多くのスター選手が辞退してしまったが、昨季のNBAのシーズンMVP、ヤニス・アデトクンボ(24=バックス)はギリシャ代表として出場するし、昨季に球宴初選出を遂げたナゲッツのセンター、ニコラ・ヨキッチ(24)もセルビア代表のユニフォームを着る。すべてのNBA選手が打算的になっているわけではなく、W杯中国大会に参加する全32カ国の代表メンバーには愛国心があふれている。だからこそ日本代表にも戦う意味がある。

 W杯1次予選ではトルコ(9月1日)→チェコ(3日)→米国(5日)と対戦。日本にとっては3チームすべてが強敵だ。その世界の壁に立ち向かう八村や渡辺がどんな戦いを見せるのか?願わくば相手の監督にぜひこう言わせてみたい。

 「We had a heck of a time」…。

 

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは4時間16分。今年の北九州マラソンは4時間47分で完走。

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